研究紹介磁性微粒子のバイオ・メディカル応用

フェライトめっき膜は水溶液中で作製されるため親水性が良く、また高い生体適合性を示すので生物・医学的応用に適します。

◎実用化(製品化)された医療診断用磁性微粒子

・ポリアクリル微小球(直径0.25〜50mm)表面をフェライトめっきした医療診断用磁性微粒子「フェリスフェア®」として製品化されました。このビーズは磁気分離技術が活用できるため、診断の精度と速度を飛躍的に高めることができます。



フェライトめっき技術の知見をベースとして、次のような画期的な医用磁性ビーズ作製法を開発しました。

◎画期的な医用磁性ビーズ作製法を発明

従来のフェライト医用磁性ビーズでは、まずフェライト粒子を合成し、その表面に被覆用の有機分子やたんぱく質などの生理活性分子を固定していました。
当研究室では、フェライト微粒子に生体活性物質を固定するのではなく、発想を逆転してフェライト超微粒子(直径:8-10nm)を合成しながら、その表面に生理活性物質(抗体、たんぱく質など)または表面コート用の機能性有機分子を、フェライトナノ粒子へ直接固定する技術を開発しました。
これによれば、
 (1) 生理活性物質が強固な化学結合で固定される
 (2) 3℃の低温かつ中性領域で反応させるので、極めて不安定な生理活性物質をも固定が可能
になります。
この利点を活かして、フェライトナノ粒子および、強い磁化を持つ金属ナノ磁性粒子を、機能性ポリマーで強固に被覆した磁性ビーズを作製し、
 @抗ガン磁気温熱療法、
 AMRIおよび超音波造影、
 B抗ガン薬剤の磁気輸送、 
 Cバイオスクリーニング
 D生体分子のホールセンシング
などに用いられる医用磁性ナノビーズを開発しています。
MG PARTICLE
MG PARTICLE    MG PARTICLE

◎抗原・抗体反応を利用したガンの診断・治療薬の開発

これまでに、フェライト微粒子を用いた
(1)薬剤の磁気輸送(抗ガン剤をフェライト微粒子表面に固定し、磁力を用いて患部に輸送する)
(2)磁気ハイパーサーミア(磁性微粒子をガン患部近傍に注入し、体外から高周波磁界で磁性微粒子を昇温してガン細胞を殺す)
の開発研究が広く行われていますが、未だ実用化に到っていません。また抗ガン剤の磁気輸送技術も実験レベルに止まっています。その大きな理由のひとつは、磁性微粒子が時間の経過と共に、ガン細胞近辺から拡散してしまうことにあります。
当研究室では、このような問題を解決するためにガン細胞と特異的に結合する抗体をフェライト微粒子表面に固定した新しいタイプの薬剤磁気輸送およびハイパーサーミアに関する研究開発を東京工業大学フロンティア創造共同研究センター・半田宏教授と共同で行っています(平成12−14年度、平成15−17年度、平成18-20年度文部科学省科研費、基盤研究A)。

また、この技術はガン患部の診断にも使うことができます。
体に強い磁場を当て、体内の状態を診察するMRI(核磁気共鳴画像法)という方法があります。X線を使用するCTスキャンと同様に,体内の情報を非侵襲的(身体を全く傷つけることなく)に得ることができる優れた診断方法です。MRIで得られる情報を強調させるために造影剤という磁性微粒子が投与されることがあります。フェライト微粒子も実際に肝臓ガンの診断に使用されています。
しかし、これまでの造影剤は肝臓以外のガン細胞を強調することはできませんでした。フェライト微粒子をガン細胞に特異的に結合させられる研究が実現すれば、MRIによって、体内のどの部位にあるガンも高感度に検出することが可能となり、治癒の可能性のガンの高い早期治療を促すことができるようになります。
もちろん、このMRIの造影剤は、ガン細胞に結合しているので、そのまま磁気ハイパーサーミアの発熱体ともなり、診断と治療の両方が可能な非常に優れた医用ビーズでもあるのです。

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