シリコン量子ドットの表面酸化膜制御と単電子輸送 Single-electron tunneling in surface-oxidized silicon quantum dots
1997年秋期応用物理学会(秋田)シンポジウム{ナノ構造材料の電子輸送」
東京工業大学 量子効果エレクトロニクス研究センター     
アミット・ダッ タ、小田俊理
Research Center for Quantum Effect Electronics, Tokyo Inst. Tech.
Amit Dutta and Shunri Oda  
 

シランガスプラズマ中に水素ガスパルスを導入することにより、ナノ結晶シリコン の核形成と結晶成長過程を分離して、粒径10ナノメートル以下の均一粒径シリコン量 子ドットを形成した。[1,2] ナノ結晶シリコンの表面酸化膜をトンネル障壁とする構 造は微小接合を形成し、クーロンブロッケイドなどの単一電子トンネル現象を示すこ とが期待される。我々は、プレーナ型微小間隙電極による擬1次元多重接合アレイと 微小孔垂直電極構造による単一量子ドットの2通りの測定を行った。  ナノ結晶シリコンの表面は、真空装置内では水素原子により被覆されているが、大 気中に取り出すと厚さ1.5nmまでの自然酸化膜を形成する。酸化膜厚を制御するため に800oCでドライ熱酸化を行った。高品質酸化膜を形成するためには、ナノ結晶シリ コンを形成直後に真空装置内で酸化処理を行う必要がある。  プレーナ構造電極は、熱酸化シリコン基板上の多結晶シリコン薄膜をEB露光とECR 反応性エッチングにり、間隔10-70nmにパターニングして形成した。ネガ型EBレジス トを用いて、2段階露光法により微細構造電極を形成した。この電極パターン上に、 ナノ結晶シリコンを1-2層分堆積する。シリコン表面は純酸素ガス中で自然酸化す る。プレーナ電極間の電流は、2次元的にランダムに分布したナノ結晶シリコン超微 粒子の内、最もトンネル抵抗の低い部分を流れる成分が支配的になるので、擬1次元 多重接合アレイと等価的に考えることができる。低温では、クーロンブロッケイドで 説明できる特性が得られている。  シリコン量子ドットの単電子輸送を議論するためには、粒子数の限定された系での 測定が不可欠である。われわれは、導電性カンチレバー付のAFMを用いた単一量子ド ットからの電流輸送特性の測定も行っているが、種々の温度や磁界中での測定のため には、パターニングされた電極による測定が必要である。シリコン基板上の熱酸化膜 に微小孔をあける。エッチング形状の特性により、上部開口が30nmの場合。下部開口 は直径10nm程度と見積もることができる。上部に堆積した金電極と下部シリコン基板 の間に流れる電流を、ナノ結晶シリコン堆積の有無で比較して、単一量子ドットによ る電子輸送現象を解析している。  本研究の一部は科学研究費重点領域研究「単電子デバイス」により実施した。

1. A. Itoh, T. Ifuku, M. Otobe and S. Oda, Materials Research Society Symp. Proc. 452, 749 (1997).
2. T. Ifuku, M. Otobe, A. Itoh and S. Oda, Jpn. J. Appl. Phys. 36, (6B) in press (1997).
3. A. Dutta, M. Kimura, Y. Honda, M. Otobe, A. Itoh and S. Oda, Jpn. J. Appl. Phys. 36, (6B) in press (1997).