◎フェライトめっきとは??
・室温〜90℃の水溶液中で、直接強磁性フェライト膜を作製できる革新的技術です。
・1983年に当研究室で発明されて以来、工夫を重ね、各種の薄膜磁性デバイス、バイオ・メディカルデバイスへの応用が開発され、一部は実用化されました。
【参考文献】
1) 松下伸広、阿部正紀:フェライトめっき膜を用いたGHz帯域の電磁ノイズ抑制体,「セラミックス」日本セラミックス協会,41,1,pp20-24(2006).
2) 阿部正紀,半田宏:医用磁性ナノビーズの新しい作製技術,応用物理,74,12,pp1580-1583 (2005).
3) 阿部正紀、半田宏;医用磁性ナノビーズのポストゲノム解析時代における新展開;日本応用磁気学会誌、28、7、pp841-846 (2004).
4) 阿部正紀、松下伸広 : 「水溶液中で作製したフェライト薄膜・超微粒子のマイクロ波/ナノバイオ応用」、日本応用磁気学会誌、27、6、721-729
(2003).
5) M. ABE, Y. TAMAURA and T. ITOH : “Magnetic and biomagnetic films
obtained by ferrite plating in aqueous solution, ” Thin Solid Films, 216,
155-161(1992.)
◎フェライトめっきの特長
低温プロセス
(90℃以下)
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プラスチック、紙、布、生体物質、半導体素子などの低耐熱性基板OK
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水溶液プロセス
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複雑な形状の基板(チューブ、スポンジ、プリント基板ボード、ファイバー、針、微粒子etc.)の表面に均一めっき可能。生体適合性が高く、バイオ・メディカル応用に適す
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真空を用いない
プロセス
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真空を用いないプロセス-安価・簡便→工業生産に適す
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最大特長
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低温作製にもかかわらず、バルク試料と同等の磁性(ソフトからハードにいたる)を示すスピネル型・フェライト膜が得られる
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◎フェライトめっきの原理
フェライトめっきは無電解めっきの一種注1)で以下の原理に基づき、これらの@吸着→A酸化→Bフェライト生成のプロセスが繰り返されフェライト層が成長します。
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@吸着
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金属イオンの吸着席となるOH基を表面にもつ、あるいは持つように処理した基板注2)を鉄2価やその他の金属イオン(Co2+,
Ni2+, Mn2+, Zn2+, etc.)を含む溶液(FeCl2水溶液等)に浸すとOH基の上に金属イオンが吸着します。
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A酸化
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ここに亜硝酸イオン(NO2-)、空気などの酸化剤を導入することにより2価鉄イオンFe2+の一部が3価のFe3+に酸化されます。
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Bフェライト生成
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その上にさらに金属イオンが吸着することによりBスピネル形フェライトが生成します。
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注1)電気伝導性を持つフェライトであるマグネタイト(Fe3O4)に限れば電解めっきでフェライト膜を作製することも可能。
注2)例えばテフロンのようなOH基を持たない撥水製物質の表面を親水化処理してフェライトめっきを行うことが可能。
従来のめっき技術との違い
従来の一般的なめっきは還元反応によって金属膜等を析出させるのに対し、フェライトめっきでは酸化反応によって酸化物膜を析出させます。
フェライトめっきの独創性
フェライトめっきで2種類の金属イオンを含むフェライト膜、たとえばニッケルフェライト(化学組成NixFe3-xO4)を作製する際に、Fe3+イオンとNi2+イオンから出発し、アルカリを添加する従来のフェライト生成法ではフェライトの微粒子しか生成せず、薄膜は得られません。Fe2+イオンとNi2+などのイオンを原料として、Fe2+→Feの酸化反応を利用して各種のフェライトの薄膜作製を可能にしたのが、フェライトめっき法の独創的なポイントです。
原理の最大ポイント
基板表面のOH基と金属イオンが共有結合性の化学結合を行う(単なる物理吸着ではない)ために強固な付着力が得られます。
◎フェライトめっきの実験法
スピンスプレー法
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・大面積(例:8インチディスク)に均一にめっきできます。
・超高周波・電磁ノイズ吸収体の開発に用いられています。
当研究室で開発したスピンスプレー装置は実用化され、販売されております。
販売されているスピンスプレー装置の詳細はこちらをご覧下さい。
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超音波励起法
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・微粒子や複雑な形状の基板表面に均一にめっきできます。
・超音波で基板が“踊るため”固定用の“フック”や“金あみ”が不要です。
・超高周波・磁気コアおよび医用磁性ビーズの開発に用いられています。
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光励起法
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・光励起効果により膜堆積速度が80倍も増大(通常は15〜20nm/分)し、1.5mm/分に達します。
・基板を移動させることにより、フェライト膜の“マスクレス・パターニング”ができます。
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内壁/外壁法
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・チューブの内壁と外壁をフェライトでコートできます。チューブの壁を均一、かつ容易にフェライトでコートする技術はフェライトめっきしかありません。
・人工血管材の内壁をフェライトでコートすることにより、血栓がつきにくくなります。
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