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研究内容

シリコンを用いた集積回路は、世界を大きく変えましたが、ここから先にさらに進歩するためには新たな材料をMOSトランジスタに導入することが必要であると言われています。 そこで、InGaAsをチャネルにしたMOSFETに取り組んでいます。
とくに今後必要となる高電流動作において、充分な電子がチャネルに供給できるように、 エピタキシャル成長を用いた高濃度ソースを持ったMOSFETで、2.4A/mmという高い電流密度をドレイン電圧0.5Vで示しました。これは2018年以降に予定されているInGaAs MOSFETのITRS目標値(2.2A/mm@0.63V)を世界で始めて上回ったものです。 また、原子層堆積装置によるAl2O3等を絶縁層とした時の特性改善/またさらなる微細化(現在最小値13nm)や三次元構造デバイス(fin幅20nmのFinFET)の研究も行っています。も行っています。


チャネル長50nmのMOSトランジスタの走査型電子顕微鏡像


InPソースを持つMOSトランジスタのI-V特性

 縦に電子が走行する縦型トランジスタ構造では、電子の走行距離を結晶成長という原子層で制御でき、 かつ異種の材料組合せ(ヘテロ接合)を導入することが出来ます。
 そこで、ヘテロ接合を導入することで、チャネルに電子が入る際にヘテロ接合によるバンド不連続での電子ランチャで電子を加速したり、タイプII型と呼ばれる伝導帯と価電子帯が前もって接近しているヘテロ接合により、しきい値以下において電流量を下げる為に必要なサブスレッショルドスロープの傾きを小さくするトンネルFETの高性能化が望めます。
電子ランチャを導入した素子では、チャネル長60nm、チャネルメサ幅15nmの素子で7MA/cm2の電流密度が確認されています。またGaAsSb/InGaAsタイプII型を用いたトンネルFETでは、71mV/decという両脇にゲートを持った縦型トンネルFETとしては最小に近い値を得ています。


チャネル幅15nmの素子の断面STEM像


トンネルFETのサブスレッショルド特性

高性能化のためにチャネルを短くするには、チャネルを同時に極薄膜化する必要がありますが、代表的な層状物質であるグラフェンは単純な周期構造ではバンドギャップを持たない欠点があることから、バンドギャップを有する層状半導体が期待されています。 当研究室では、単分子層で高い電子移動度(1,800 cm2/Vs)とSiと同等の禁制帯幅(1.2 eV)が予測されている遷移金属カルコゲナイドHfS2において世界で初めてトランジスタ動作を実現しています。移動度の高さが期待できるHf系材料についてFETを世界で初めて動作させました。現在、高移動度の実証の実験などを行なっています。

電源電圧などの高電圧の領域においては、耐圧の点でSiよりもバンドギャップが広い化合物半導体であるGaNを用いたデバイスが有望です。当研究室では、GaN HEMTについてしきい値を作製時に制御する為の新たなプロセスの開発を行っています。 またGaN HEMTの高周波応用や電力応用に向けたあらたな構造に向けた研究も行っています。


デジタルエッチングされたGaN HEMT AlGaN層の断面TEM像


デジタルエッチングされたGaN HEMT AlGaN層の模式図

 化合物半導体トランジスタは、携帯電話での高周波における低消費電力要求などから広く使われるようになった 新しいトランジスタです。現在はGaAsという化合物半導体を用いているのが一般的ですが、 InPという材料を用いることで、速度が2倍程度速くなり、遮断周波数では500GHz を超える トランジスタがInPを材料としたヘテロ接合バイポーラトランジスタとHEMTでそれぞれ報告されています。
我々はこのInP系ヘテロ接合バイポーラトランジスタにおいて、さらなる高速化を目指して エミッタの極微細化とコレクタ寄生容量の削減の研究を行っています。エミッタ幅55nmは世界最小であり、また最高電流密度としては5MA/cm2を達成しました。 金属細線をコレクタ電極とすることで総ベースコレクタ容量で1fF以下という世界最小の容量を確認しています。さらに絶縁物を埋め込むことでの改善を行いました。(本研究は現在さらなる微細化技術の発展を待って休止中です。)


エミッタ幅55nmのトランジスタの走査型電子顕微鏡像


遮断周波数468 GHzの素子のマイクロ波特性

 ヤングの二重スリット干渉は光の波動性を明解に示す実験であり、 ファインマンは電子波の二重スリット干渉を説明した後、これは思考実験で、 二重スリット間隔や干渉縞周期があまりに小さく実際の実験はほとんど不可能、と書きました。 が、我々は微細加工技術を駆使して二重スリットを作り電子波の干渉縞を観測しました。 この実験は熱平衡から数10meV と大きくはずれた高速なホットエレクトロンであること、 人工の25nm 間隔二重スリットによる回折/干渉という二つの点が新しく、 今後この固体中の人工構造による電子線回折達成は、電子波によるフーリエ変換演算のような、 波動性に基づく新たな機能をもつデバイスへの道を拓くことが期待できます。
(本研究は現在さらなる微細化技術の発展を待って休止中です。)

作製された構造の模式図

 有機金属気相成長法は原子層オーダーの制御が可能な化合物半導体結晶成長法であり、 半導体レーザや携帯電話用トランジスタなどの作製に主に用いられている方法です。 我々は1980年代初頭から装置の自作からこの研究を始め、多くの研究者を産 業界に生み出しています。 現在でも日本酸素製の装置を用いて純度向上などの研究を行っており、 2003年には InP系では液体窒素温度で 世界最高の移動度をもつ二次元電子ガス構造を報告しています。

 電子ビーム露光法は任意の極微細構造を作製できる最も有効な方法です。 我々が研究に用いている様々なデバイスプロセスの基礎でもありますが、さらなる極微細化の為に、 何で解像度が決まるか、また線幅の揺らぎが何で決まるかの研究は重要であり、 現在は主に電子線レジストで決まっていると考えられています。 そこで電子ビーム露光装置としては世界最高水準にある我々の装置を用いて、 解像度限界・線幅揺らぎの研究を行っています。