IWAMOTO LABORATORY

■研究紹介



生体膜

人の身体の中には60兆の細胞が存在し、そのサイズは数ミクロン ( 1ミクロンは、1ミリの1000分の1 ) です。肝臓の肝細胞や血液中の赤血球、これらすべて細胞であり、その役割どおり特殊な働きをします。それぞれの細胞がその固有の機能を持つのは、それぞれ固有のタンパク質を持つからです。200種類以上のタンパク質が存在しますが、これらは細胞内でどのように存在するのか?その答えは細胞を覆っている膜にあります。

細胞はそれぞれ約5〜10ナノメーター ( 1ナノは、1ミクロンの1000分の1 ) の膜に覆われています。この膜はミトコンドリアや核などもそれぞれ覆われています。この膜は脂質分子とタンパク質によって構成されていて、生体膜もしくは細胞膜と呼ばれます。脂質は一方が水に溶けやすく、もう一方は溶けにくくなっています ( このような分子を両親媒性分子と呼びます )。生体膜内で脂質はこの水に溶けにくい部分をお互いに向き合わせ、外側に水に溶けやすい部分を出した状態で膜 ( 二分子膜 ) を形成します。この膜内にタンパク質は埋め込まれて存在します。この生体膜が細胞の機能および形状を決める事になり、さらに形状は脂質の二分子膜が、機能はタンパク質が担うのです。


図1:細胞と生体膜

このような細胞 ( および生体膜 ) は、数ミクロンという非常に小さいサイズながら高い機能を有しています。例えば、私達が指で熱いものに触れた瞬間、脳にその熱いといった感覚が伝わります。これは指の神経細胞から脳まで一瞬で熱いという電気信号が伝わるからです。また細胞がその特有の機能は、ある決められたときにしか発現しません。これは生体膜の中に埋め込められたタンパク質が反応できる物質はすでに決まっているので、それ以外のものとは反応しないといった特殊な選択性に由来するからです。

このような細胞をエレクトロニクスの分野で応用する事ができれば、現在、高機能を持ち、かつ非常に小さいデバイスを作製しようとしている世の中に新たな可能性を提示できるようになると考えられている。このような分野をナノバイオ ( バイオナノ ) テクノロジー ( エレクトロニクス ) といいます。

しかし細胞の機能も脂質の二分子膜の中にタンパク質が存在して初めて発現するのであって、タンパク質単体では体内で存在できないし、機能も発現しません。エレクトロニクスの分野での応用を考える上で脂質二分子膜の存在ははずせません。


図2:基板上に作成した生体膜の模式図

そこで、本研究室では固体上 ( 金属やSiなど ) に擬似の生体膜の作製を試みています。そして作製したものの特性等を評価しています。この作製したものの応用として、DNAや血液といったもののセンサー応用を考えています。

関連した研究業績

[1] Y.Nishimura, R.Wagner, T.Manaka, and M.Iwamoto, "Preparation and surface morphology change observation of hybrid bilayer membranes",Thin Solid Films, Vol.499, pp.40-43 (2006 Mar)