IWAMOTO LABORATORY

■研究紹介



交流電界発光による電荷注入観測と絶縁劣化の評価

有機材料はこれまで、電気絶縁材料として広く用いられてきました。有機絶縁材料に高電圧を印加すると、金属から材料内へ電荷が注入され、電気絶縁性の劣化、破壊といった現象が引き起こされます。特に交流電界下では、電子・正孔の交互注入により、再結合に伴った電界発光(electroluminescence)が得られます。したがって、有機材料の絶縁破壊を理解・予測するために、材料からの光を観測するといった手法は非常に有効です。

ところが近年では、この電荷注入現象やそれに伴った発光現象を積極的にデバイスへ応用し、有機LED(OLED)素子や有機FET(OFET)等が実用化されつつあります。一般に、金属から材料内へ注入される電荷(キャリア)の種類(電子または正孔)は、金属仕事関数と材料の電子状態によって決定されることが知られています。OLEDとは有機薄膜を異種金属によってはさみ、直流電界によってそれぞれの電極から電子・正孔を同時に注入し、材料内で再結合発光させるデバイスです。一方OFETは、有機薄膜の面内方向に1種類の注入キャリアを走らせ、3電極によってこれを制御するデバイスです。

本研究室では、以上のようなOFETの形状を用いて電界発光を観測することで、金属から有機材料内へのキャリア注入現象を観測することを考えています。ここで、交流電界を用いることで単一電極から電子・正孔を交互注入し、電界発光を得るという手段を採用しました。これにより有機材料から得られる電界発光には、絶縁劣化に関する発光と、デバイスとして利用可能な発光の二種類が存在するという観点から、発光現象の詳細を評価しています。


図1:有機ELの素子構造

現在観測されているOFETからの交流電界発光は、図に示されたような減衰発光であり、絶縁破壊やホールトラップなどの減衰過程等を考案しています。また本研究は昨年からスタートした研究であり、現在、様々なアプローチから研究を進めています。今後、OFETの構造を利用した発光位置制御や、減衰プロセスの詳細評価などを行っていきます。

参考文献

[1] N. Shimizu et al., IEEE Trans. Electr. Insul., EI-14 (1979) No.5.
[2] T. Lebey et al., J. Appl. Phys., 68 (1990) 275.
[3] A. Hepp et al., Appl. Phys. Lett., 91 (2003) 157406.