IWAMOTO LABORATORY

■研究紹介



液晶の界面配向

液晶ディスプレイとして広く応用されている「液晶」。液晶というのは、「液体」の性質と、「結晶」の性質をあわせもつ材料である。水のように流れる材料でありながら、水晶のように向きがある。このような性質は液晶分子同士が向きをそろえやすいという性質からきている。このような性質をもつ液晶は、ディスプレイに使われるようなものの他に、イカ墨やコレステロール、赤血球を形作る細胞膜など、自然界にもたくさん存在する。


図1: 液晶ディスプレイ。

ところで、ディスプレイをつくるなら、液晶分子を画面全体になわって一つの方向にそろえる必要がある。これは昔から柔らかい布でガラス基板の表面をサッとひとなですると見事に並ぶことが知られていて、実際の液晶ディスプレイを製造する際にも利用されている(ラビングと呼ばれる技術である)。しかし、なぜ柔らかい布でなでることで分子の向きがそろうのかを物理的に説明するのはなかなか難しく、現在研究が進められてる。

本研究室では光第二次高調波測定や表面電位測定など、光学的手法と電気的手法をあわせて用いることで、基板上数ナノメートルの領域で、液晶分子がどのように向きをそろえているのかを実験から明らかにしようとしている。一方で誘電物性と静電現象を基礎にして、なぜそのように向きがそろうのか、理論面からの解明にも取り組んでいる。

これまでの研究で、基板に最も近い部分の液晶分子の向きのそろい方は水面上に浮かんだ石鹸膜と同じように特別な性質があることが明らかになってきた。この特徴に注目して界面での液晶の特徴の理解を進めている。

関連した研究業績

[1] Dai Taguchi, Takaaki Manaka, and Mitsumasa Iwamoto, "Orientational order of 4′-n-pentyl-4-cyanobiphenyl molecules deposited on azobenzene monolayers",Thin Solid Films, Vol.499, pp.229-233 (2006 Mar)
[2] Dai Taguchi, Makoto Hamatsu, Kazuki Kitazawa, Takaaki Manaka, and Mitsumasa Iwamoto, "Orientational ordering process of 4’-n-pentyl-4-cyanobiphenyl molecules deposited on polyimide Langmuir-Blodgett films," Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects, Vol.284-285, pp.263-266 (2005 Dec)
[3] Takaaki Manaka, Dai Taguchi, Dai Nakamura, Hajime Higa, and Mitsumasa Iwamoto, "Orientation of liquid crystal molecules on command surface LB monolayer studied by the surface potential and SHG technique," Colloids and Surfaces A: Physicochem. Eng. Aspects, Vol.257-258, pp.319-323 (2005 May)